このページは、手術をしないで近視を矯正したい人のためのオルソケラトロジー角膜矯正用コンタクトレンズによる視力矯正について説明しています。わかりやすさを優先するために、ところどころ医学的ではない表現をしているところがありますが、ご了承ください。
※遠谷眼科で使うオルソケラトロジーのコンタクトレンズは、東レ株式会社の開発した素材がレンズに使われている角膜矯正用コンタクトレンズ「Breath-O Correct(ブレスオーコレクト、医療機器承認番号22400BZX00094000)」という製品です。 ブレスオーコレクトは酸素透過性が高く(Dk値156)、やわらかく、日本人の角膜の形に合うように設計されたオルソケラトロジー用コンタクトレンズです。この説明に使われている画像は、ブレスオーコレクトの販売業者である東レ株式会社による説明資料からすべて転載しています。
▼このページの目次
- 1.オルソケラトロジーとはどのようなものか
- 2.オルソケラトロジーの長所:可逆的治療、近視の進行緩和効果
- 3.オルソケラトロジーの短所:強い近視には不適
- 4.オルソケラトロジーに適している人、適していない人
- 5.オルソケラトロジーを受けるにあたって注意していただきたいこと
- 6.オルソケラトロジーの費用
オルソケラトロジーは完全予約制です。
ご希望の方は事前にお電話またはメールにてお問い合わせください。
1.オルソケラトロジーとはどのようなものか
私達が「視力がいい」「ものがよく見える」と思っているときは、眼の中に入る光が網膜でうまく集まっているときです。裸眼のままで眼の中に入る光が網膜でうまく集まっている人は正視といって、小数視力でいえば1.0から2.0ぐらいの視力がでる人です。眼の中に入る光が網膜でうまく集まらない人は、近視か遠視です。もう少しくわしくいうと、光が網膜の手前で集まる人が近視、光が網膜の後ろで集まる人が遠視です。近視や遠視であることがわかったら、まずメガネやコンタクトレンズを使って、眼の中に入る光が網膜で集まるように調整し、ものがよく見えるようにします。
視力を矯正する方法には、手術をしない方法と、手術をする方法があります。どちらの方法も、最終目的は眼の中に入る光を網膜にうまく集めてものを見やすくするということです。手術をしない方法は、みなさんがよく知っているメガネやコンタクトレンズを使うことです。コンタクトレンズというと、普通は近視や遠視を矯正する丸いカーブの形をしたコンタクトレンズのことをいう場合が多いですが、眼の表面の真ん中を平坦にさせるような特殊な形をしたコンタクトレンズもあります。このような特殊な形のコンタクトレンズを寝ている間にずっとつけて、眼の形をうまく形づけることにより視力を矯正する方法が、このページでこれからお話するオルソケラトロジーです。手術をする方法は、エキシマレーザーによって角膜の表面を削り、角膜の形を変えて視力を矯正する方法がレーシックやPRK、眼の中にコンタクトレンズのような眼内レンズをいれて視力を矯正する方法が、有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)です。
※レーシック、PRK、有水晶体眼内レンズ(フェイキックIOL)についての説明は 屈折矯正手術 のページをお読みください。 それでは、これからオルソケラトロジーによる視力矯正について簡単に説明していきます。下の画像を見てください。
左の画像は、オルソケラトロジー用レンズをつける前の近視の人の眼の中の光のまとまり具合をあらわしています。眼の中に入る光が網膜上で集まらず、網膜の手前で集まっているので、ピントが網膜上にきていないピンボケ状態になっています。中央の画像は、オルソケラトロジー用レンズ(図では茶色のコンタクトレンズ)をつけることで眼の表面の角膜が変形させられて平坦になり、眼の中に入る光が網膜上でうまく集まるようになっていることをあらわしています。右の画像は、オルソケラトロジー用のレンズを寝ている間にはめたことで変形させられた角膜が、レンズをはずした後も、一定時間はその平坦な形を保っていて、そのために眼の中に入る光が網膜上でうまく集まるということをあらわしています。この右の画像の状態が、寝ている間にはめていたオルソケラトロジー用レンズを、起きた後に眼からはずして、裸眼で日常生活を送っている間の眼の状態だということです。
東レ株式会社の製品説明資料によれば、国内2施設において2年間にわたり実施された臨床試験(44人87眼)では、12週後には98.5%の人が小数視力で0.7以上になっており、89.5%の人が小数視力で1.0以上になっていました。
角膜のやわらかさには個人差があるので、同じオルケラトロジー用レンズを使って角膜の形を変えようとしても、その変り具合には微妙に差がでてきますから、裸眼視力の変化のスピードが皆同じになるわけではありません。しかし、オルソケラトロジーという視力矯正方法が患者さんの眼にうまく合っている場合には、裸眼視力の変化は数日のうちにある程度は自覚できるものだと考えてください。
2.オルソケラトロジーの長所:可逆的治療、近視の進行緩和効果
レーシックやPRKという手術による視力矯正方法も、近視の矯正のためには眼の表面にある角膜の真ん中を平坦にするという考え方はオルソケラトロジーと同じです。レーシックやPRKでは、エキシマレーザーで角膜の中央部を平坦にするような形に削るのですが、角膜を削ってなくしてしまうので、いったん手術をすると角膜の形は元には戻りません。これを不可逆(元にもどらないという意味)の手術といいます。一方、オルソケラトロジーは、ただ型にはめて角膜の形を一時的に変えるだけなので、時間がたてば角膜の形は元に戻る可逆(元にもどるという意味)の治療です。いざという時にはもとに戻せる、いやならいつでもやめることができるという点では、オルソケラトロジーの可逆性は長所であると考えてよいと思います。 最近では、オルソケラトロジーには近視の進行を緩和する効果があることが明らかになってきています。近視の進行を緩和するとはいっても、それは進むのをゆっくりさせるだけのことで、近視の進行を完全に止めるわけではありません。ですから、オルソケラトロジーをすれば、近視の進行が止まるとは誤解しないでください。近視になるのが止められないのなら、オルソケラトロジーをしてもあんまり意味がないと考える人がいるかも知れませんが、近視になるのは仕方がないけど、それが本来よりは少しでも軽くてすむのならオルソケラトロジーをする意味はあると考える人もいるでしょう。なぜオルソケラトロジーが近視の進行を緩和するのか、詳しいメカニズムについてはまだよくわかっていないのですが、これまでの世界の実績からは、近視の進行を緩和させる効果があるらしいということはわかっています。そして、その近視の進行緩和効果を狙って、小学生ぐらいの人に対しても積極的にオルソケラトロジーを実施する医師や親御さんが世界中で増えてきています。
子供さんが近視にならないようにするにはどうしたらよいのか、という相談をよく受けます。今、眼科でわかっていることは、戸外で適度に太陽の光を浴び、適度にアウトドア活動をするということが、最上の近視予防法だということです(つまり、昔の子供達のような生活をするということです)。最近の、携帯電話、ゲーム、パソコン、勉強のしすぎで、近くばかり見ているような生活は、眼にとっては決して良い生活とはいえません。しかし、勉強をしないで野原で一日中遊んでばかりいるわけにもいきませんから、そこはバランスをうまくとって生活していただきたいと思います。
3.オルソケラトロジーの短所:強い近視には不適
オルソケラトロジーの目的は、オルソケラトロジー用コンタクトレンズを眼につけて一晩寝ることによって、次の日の昼間の裸眼視力を日常生活に支障がないよう保つことです。あくまでも、オルソケラトロジー用のコンタクトレンズの型にはめて整えた眼の形がキープされている間だけは、近視が軽減されるしくみなのです。しかし、近視の程度がきつい、強度近視の人の場合は、オルソケラトロジー用のコンタクトレンズがもつ角膜を変形させる力が足りないことがあり、オルソケラトロジーという方法では、日常生活に支障がないレベルにまで視力を改善させることができないことが多く、満足度もそれほど高くないと思われます。
4.オルソケラトロジーに適している人、適していない人
日本眼科学会のガイドラインによれば、オルソケラトロジーの対象となる人としては、親権者の関与を必要としないという趣旨で年齢としては20歳以上、近視度数が-1.00Dから-4.00、乱視度数は-1.5D以下の人とされています。ガイドラインは目安ということなのでこのガイドラインにある数字にあてはまらないからといって、オルソケラトロジーができないというわけではありませんが一応何らかの基準として定められているからにはそれなりの理由がありますから、その理由を理解することが大切です。たとえば「20歳以上」という年齢についてのガイドラインについていえば、19歳11か月の人と20歳1か月の人が、何がどのぐらい違うのかといえば、何もあまり違わないと思います。10代では眼がまだ成長している人が多いので、眼が成長で変化する状態の人に治療をするときには、大人の眼に治療をするのとは別に注意をしないといけないということがありますし、法律的にいって20歳未満の場合は自己責任がとれないということもあります。ですからガイドラインとは異なり、20歳未満の人がオルソケラトロジー用のコンタクトレンズを使う場合には、20歳以上の大人と同様にオルソケラトロジーに対する理解度が高く、きちんとコンタクトレンズの清潔な使用と管理ができるということが治療を受ける前提条件となります。このことは本当に重要なことで、現在、20歳未満の特に野球やサッカーなど、スポーツをする子供達の間にオルソケラトロジー用のレンズを使って視力を矯正する人がどんどん増えてきているのですが、一部では面倒くさいという理由でずさんなレンズの管理をしてしまったために悪い菌に眼が感染してしまい、視力が落ちるどころか、ほとんどものが見えなくなってしまうような、とんでもない眼の状態になってしまうことが起っています。これぐらい大丈夫だろう、という甘い見通しが、大変な事態を引き起こすことにつながりますから、未成年の場合は、親御さんがお子さんの清潔なレンズの使用と管理を、きちんと監督してくださらないといけません。
コンタクトレンズのずさんな衛生管理をすると、どのようなこわいことが起るかということについては、以下の日本コンタクトレンズ学会のホームページをお読みください。(学会の許可を得てリンクを記載しています) http://www.clgakkai.jp/general/consensus04-1.html
また、近視の程度からいえば、ガイドラインでは-1.00Dから-4.00Dの人が対象であるとされているように、比較的軽い近視の人がオルソケラトロジーの対象とされています。-4.50Dや-5.00Dぐらいの近視なら、ガイドラインから外れていても、人によってはオルソケラトロジーの効果が見込める人がいるかも知れません。しかし-8.00Dや-10.00Dぐらいの強い近視の人にはオルソケラトロジーは適しません。それはあまりきつい近視になると、オルソケラトロジー用のコンタクトレンズをはめて寝るだけでは、眼の形を整えきれず、結果として近視がそれほど矯正されないので、裸眼視力の改善があまり見られないからです。また、角膜のある部分だけが他の部分に比べて突出している人など、角膜の形がスムーズではないために乱視が強い人にも適しません。 このような角膜の形がいびつになっている人の場合は、オルソケラトロジー用のコンタクトレンズが角膜の上にうまくのりにくいため、角膜の形を寝ている間にうまく変形させることができないのです。免疫疾患や糖尿病がある人、コンタクトレンズやそのケア用品にアレルギーがある人も、オルソケラトロジーには適しません。
見え方の変化という観点からいえば、オルソケラトロジーではオルソケラトロジー用のコンタクトレンズで角膜の形を変えますから、角膜の形の変わり具合によっては、眼の中に入る光の進路が大きく変わります。そのために裸眼では、メガネやコンタクトレンズを使っていた時に比べて、見え方が少しぼやける、シャープさに欠ける、ということが起こるかも知れません。特に、ハードコンタクトレンズをつけたときの見え方に慣れている人は、オルソケラトロジーによる裸眼での見え方については、ちょっと今までの見え方とは違う、と不満がでるかも知れません。それはハードコンタクトレンズでは角膜の形がかなりスムーズに補整されている分、眼の中に入る光のばらつきが軽減されているので、見え方の質がその人本来の眼による見え方よりもアップしているからなのです。また、妊娠中や授乳中は視力が変動しやすいことがわかっていますので、この期間の視力のデータはあてになりません。その人の本来の視力を考える上で、どこを基準にしたらよいかがわかりませんので、オルソケラトロジー用のレンズをうまく作ることができません。
オルソケラトロジーをしてはいけない人の主な例は以下のとおりです。
5.オルソケラトロジーを受けるにあたって注意していただきたいこと
オルソケラトロジーは当初、大人に対する視力矯正治療として考えられたものでしたが、手術をしない視力矯正方法ということで子供に対する視力矯正治療としても多く実施されるようになってきました。前項でも述べましたが、スポーツをする子供達の間で、メガネやコンタクトレンズによる怪我を避けられるという利点から、オルソケラトロジーに対する支持が急激に高まってくる一方で、衛生に対する判断能力が未熟な子供達の場合には、毎日のレンズの清潔管理が面倒だと思うあまりにずさんな管理をしてしまい、(これはオルソケラトロジーだけにかかわらず、どのコンタクトレンズでも同様ですが)、いつのまにか毒性の強い菌がレンズの表面で繁殖し、その菌に自分の眼も感染して大事に至る事例が起こっているという報告がなされています。毒性の強い菌に眼が感染してしまうと、視力が著しく低下して元にはもどらない、最悪の場合には角膜移植手術をして角膜を取り替えることが必要になるというようなひどいことが起こってしまいます。ですからレンズの清潔管理には、大人でも、子供でも、本当に細心の注意をはらっていただきたいと思います。
また、オルソケラトロジーで使うレンズが、いくらやわらかく安全性の高い素材でできているといっても、眼の表面に異物をかぶせることには変わりありません。使い方が悪いと、眼を傷つけたり、悪い菌に感染して角膜が溶けてしまい、ひどい視力障害が残ってしまうことがあります。軽い異物感がある、まばたきが多くなる、かゆみがでる、涙がでる、めやにがでる、まぶしく感じる、視力が不安定になる、めまいがするというようなことは、レンズに眼が慣れるまでの数週間は誰にとっても起こりやすい症状ですが、このような症状ではなくて、万一悪い菌に感染した時にでてくるような症状がでてきた場合には、視力を守るために迅速な処置が必要なので、定期検診はもちろん、状況によってはただちに眼科医の診察を受けるようにしてください。
6.オルソケラトロジーの費用
保険がきかない自費診療です。
・オルソケラトロジーに適した眼かどうかを判断する検査費用 5,000円
・オルソケラトロジー用コンタクトレンズ代(両眼)および6カ月間の検診費用 14万円
・6カ月以降の定期検診費用 毎回2,770円
ただし、保険診療における診療報酬が改訂されるとき、消費税率が変更されるとき、その他医療材料費が変更されるときなどは、内容に応じて自由診療の費用も適宜変更します。