糖尿病網膜症


一般の患者さんに対して病気をわかりやすく説明しようという目的から、医学的な表現とは異なる部分もありますがご了承ください。 なお、ここにある説明よりもさらに詳しく幅広い情報を知りたい人は、説明文章の最後に日本眼科学会のホームページを学会の承認を得てリンクしていますので、そちらをご覧ください。


1.糖尿病網膜症の一般的な説明

糖尿病網膜症は、写真を写すカメラでいえば、画像を記録するフィルムやメモリーカードと同じような働きをする、眼の奥にある網膜というところが、だめになってしまう病気です。 網膜は光や色を感じる、厚さ0.2 ミリの薄い膜です。

糖尿病網膜症の初期から中期では、自覚症状がほとんどありません。 病気が進んで後期になると、視力が落ちたのが自分でもわかりますが、その頃には網膜が、かなりいたんでいるので、失明に近い状態になってしまうことがあります。

病気のない人の網膜

糖尿病網膜症の人の網膜

糖尿病網膜症は、糖尿病から起こる眼の病気です。大人が失明する病気のうちでトップ3に入る病気のうちのひとつです。 糖尿病になると血液中の糖分が高くなり、血液に粘りがでてくるため、血管がつまったり傷みやすくなったりして、血流が悪くなります。血流が悪くなると、網膜に酸素や栄養が行き渡らずに、網膜の中で傷つくところがでてきます。 たとえば、零下何十度というような、気温があまりにも低くて、足の指先にまで血液がいかないようになってしまったとき、しもやけを通りこして凍傷になって指先がだめになってしまうのと同じようなことだと思ってください。 一度傷ついてしまったフィルムやメモリカードでは、写真がうまく写りません。人間の眼も網膜が傷つくと、ものがよく見えなくなってしまうのです。 糖尿病網膜症になると、眼の中の血流が悪くなり酸素や栄養が不足してくるので、それを補おうとして、網膜に血管が新たにつくりだされます。しかし、その血管は急ごしらえなので不完全で、すぐに壊れてしまうのです。 そうすると、網膜の前にある硝子体というところにまで出血(硝子体出血)したり、網膜がはがれてしまったり(網膜はく離)、網膜の中でも、一番ものを見るのに重要な部分である黄斑部というところに水がたまったりして(黄斑部浮腫)、視力が非常に落ちてきます。


2.糖尿病網膜症の治療

40歳から50歳までの人は、若いので糖尿病網膜症の進行が早いといわれています。 初期の段階で見つけて血糖のコントロ-ルをきちんとすれば、病気の進行はくいとめることができます。 中期の段階では、1回5分程度でできるレーザー手術(網膜光凝固術)をします。中期から後期ぐらいの間では、抗VEGF硝子体注射、テノン嚢下ケナコルト注入、もっと病気が重くなると入院をして行う硝子体手術をします。 硝子体手術は、眼の中で出血している場合や網膜に病気がある場合に、病気がそれ以上進まないようにするために行う手術なので、手術をしても視力が良くなることはほとんどありません。 しかし、もし手術をしなければ、もっと病気が悪くなっていずれ失明してしまいますから、やはり視力がそれほど戻らなくても、手術をしなければなりません。 糖尿病網膜症による失明を防ぐために、ぜひ実行していただきたいことは、 ①血糖コントロ-ル(食事、運動、糖尿病の治療)をすること、②定期的に眼科で眼底検査をすることの2つです。 早期発見と早期治療が失明を防ぎます。

※もっと糖尿病網膜症について幅広く詳しい情報を知りたい人は、以下のページもご覧ください。(学会の許可を得てリンクをつけています)

日本眼科学会のページ(糖尿病網膜症) http://www.nichigan.or.jp/public/disease/momaku_tonyo.jsp